歩行介助は何もリハビリの為に実施するものではありません。
家族や他スタッフの為に歩行介助していますか?
あなたしかできない歩行介助はマジで何の意味もありません。
家族や他スタッフが「安全に」「簡単に」「どこでも」実施できる歩行介助を目指していく必要があります。
特に家族に歩行をお願いする場合、どのような所に重きを置けばいいのでしょうか。
「距離」や「速度」や「美しさ」は求められず、いかに労力を求めずに簡単に実施できるかがポイントになります。

まずLLBを装着してぇ、滑らないように室内シューズを履かせてぇ、脱臼しないように三角巾を巻いてェ…
そんな歩行を家族に頼んだら間違いなく継続しませんし、寝たきり一直線です。
本当に家族目線に立った歩行介助をしていくための考え方とポイントがあるので、徹底的に意識していきましょう。
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家族や介助者に介助歩行を指導する際の考え方
- 患者が自分でできる範囲を明確にする
- 可能な限り介助量を減らす
- 分かりやすい指導を心がける
患者が自分でできる範囲を明確にする
家族は患者の事を「何もできない」と考えています。
- 起こすのも介助
- トイレ行くのも介助
- 歩行も介助
それでは家族のほうが参ってしまいますよね。
だから家族に介助方法を説明する前に、できることを確実に伝えることが必要になります。

起き上がって立ち上がるまでは見守りでできます、でも歩き初めにふらつくので、その時に少し支えてください。
5歩ほど歩けば、あとは手を放して見守っていれば大丈夫です。
このように、できることとできないことを明確に仕分けてください。
「たまに足が引っ掛かります」というような曖昧な表現は避け、「足が引っ掛かるので十分注意してください」と言うように注意喚起してあげてください。
可能な限り介助量を減らす
- 車いすなら自力でトイレにも外にも行ける
- 手をつなげば杖で歩行可能
あなたはどちらを目指しますか?
身体機能面の身で考えれば「2.手をつなげば杖で歩行可能」かもしれませんが、介助量を考えると「1.車いすなら自力でトイレにも外にも行ける」かもしれません。
実際、患者の家族の介護負担を考えると、目指すべきは「1.車いすなら自力でトイレにも外にも行ける」かもしれません。
あなたは歩いたほうが偉い!凄い!という考えを第一に持っていませんか?
歩くことは、単なる移動手段の1つなので歩行にこだわる必要はもしかしたらないかもしれませんよ。
介助量が減るのであれば、装具もドンドン活用すべきです。
分かりやすい指導を心がける
家族はしろうとです。
何もわからない状態であると考え、分かりやすい指導をする必要があります。
家族はしろうとだ。
家族指導で
「つま先がつまずくので気を付けてください」
というのは指導として甘い。「左に曲がるとき右足先が引っ掛かり、右前に崩れやすいので右側から介助してください、軽く右肩に触れてあげるだけで修正できるので心配は要りませんよ」
と、明確に指導してあげよう
— キム兄@ノー残PT (@kimkim3150) December 8, 2019
- 寝返りは腕を組み、膝を立てて寝返る方向に押すとコロンと寝返れる
- 階段昇降の介助は1段下の段から支える
- 杖の出し方は「杖・弱い方・強い方」
というように明確な指導を心がけてください。
家族や介助者に介助歩行を指導する際の注意点
- できること・できないことを明確化させる
- お金を使わせない
- 家族の暮らしを妨げない
できること・できないことを明確化させる
患者自身でできることとできないことを明確にすることで、家族は介助しやすくなります。
どこまでできてどこに手助けが必要かをちゃんと伝えてあげないと過介助になり、家族の心身的負担、患者の依存度増大、活動範囲の狭小化になりかねません。
患者のできる事を増やすのは、患者自身の為でもありますが、その後介護する家族の為でもあるという事とを忘れないでください。
お金を使わせない
患者が歩行するために訪問リハビリやデイサービスを使って練習させる。
室内はいたるところに手すりを付け、装具を作成する。
確かにそれで歩行しやすくなるかもしれませんが、金銭的負担はどうなるでしょう?
理学療法士はこのあたりがスッポリ抜けている人が非常に多いですね。
- 要介護1の人と要介護5の人がデイサービスを使うとどれくらいの差額になりますか?
- その患者は年金はいくら貰ってるんですか?
- そのサービス料金、払えますか?
あなたの生活で、急に毎月4万円の支出が増えたらどうなるでしょうね。
理学療法士はもっとお金のことを勉強すべき。
患者にセルフエクササイズを指導して、毎日やるように家族指導したほうが金銭的負担は少なくなりますよね。
家族の暮らしを妨げない
患者を歩かせるために手すりをつけることはとても重要な事ですが、それよりさらに大切なことがあります。
それが患者の家族の暮らしです。
どうも理学療法士は患者の事ばかりに集中してしまいますが、患者の帰る家では家族も生活してるはず。
あなたの家がいきなり手すりだらけになったらどう思いますか?
患者が帰ることで家族が窮屈な生活をしなければならないのであれば本末転倒です。
患者が歩行するために必要な手すりも、健康な家族からしたら邪魔でしかありません。

電動ベッドを置く場所が無いからリビングに置くように指導してきました!
というスタッフがいましたが、本当にそれでいいんですかね?
家族の事が考えられてないように感じましたけど。
- 手すりがあれば安全に歩ける
- 杖はふらつくけど転ばずに歩ける
という状態なら、家の中も杖歩行や壁伝い歩きの練習をして、手すりを付けない(つけたとしても限局する)というのも1つの手段です。
まとめ:家族や介助者に介助歩行を指導する際の注意点
家族の為に歩行介助を考えるのであれば、「やりやすさ」「安全面」「手軽さ」を第一に考えるべきです。
トイレに行くのに重介助で歩かせるより、車いすで運んだほうが楽なら、別に歩行介助させる必要もないと思いますし、時間がかかっても1人で歩けるならその方が介助量は少ないので1人で歩かせるのもいいと思います。
その辺は担当理学療法士の判断に委ねられる部分。
家族目線に立った介助方法を提案していきましょう。
私たちはプロ、家族は素人です。
本当のプロフェッショナルなら、素人のこともしっかりと考えてあげるべきなんじゃないかな?と思いますけどね。