関節鏡視下手術で膝関節(半月板)や足関節(前距腓靭帯)の再建術後のリハビリをする機会が増えてきたので、術後にどんなリハビリをすべきか、またどんな所に着目していくべきかをお伝えしていきます。
今回は前距腓靭帯(ATFL)のお話です。
足関節の機能解剖
足関節の機能解剖学として、靭帯は内側と外側にあることはご存知かと思います。
内側は三角靭帯といって、とても強固に保護されていますが、外側は比較的緩い靭帯で構成されています。
なぜゆるいのか?というと可動性を出すため。
足は内転、内返しに可動性が高いほうがバランスを取るのに適しているんですね。
そのせいで、足外側の靭帯が伸びてしまう、いわゆる捻挫に陥ってしまうことが多く、手術の適応になってしまうケースが後を絶ちません。
- 痛くて歩けない場合
- 平地を歩いていても捻挫してしまう場合
- スポーツを継続したい場合など
その中でも特に損傷しやすいのが前距腓靭帯(ATFL)です。
前距腓靭帯(ATFL)の機能
前距腓靭帯は上位線維と下方線維に分かれます。
- 上位線維:底屈の制動
- 下方線維:距骨滑車の傾斜を防ぐ
前距腓靭帯断裂により底屈制動が不安定になるといえます。
逆に、踵腓靭帯(CFL)は背屈で緊張、底屈で弛緩します。
捻挫する場合の多くは足接地時に内反して起こるので、前距腓靭帯がモロに衝撃を受けて断裂するんです。
足関節の運動
足関節の機能に重要な役割を果たしているのが距骨滑車です。
距骨滑車の構造
幅が前方が広い→底屈時に遊びがでやすい(内外転に動きやすい)→背屈の可動域を確保する→関節の安定性を確保
- 長軸は前外に向く(16度)
- 底屈すると足部は内転する
- 背屈すると外転する
- 内転の支持性は靭帯構造に依存する
前距腓靭帯損傷に対して強化すべきポイント
重要なのは前距腓靭帯に負担のかからない動作を再構築させること。
- なぜ前距腓靭帯が損傷してしまったのか?
- どんな動作を繰り返していたのか?
- 生活歴はどうか?
- 仕事はどうか?
さまざまな視点から、前距腓靭帯損傷に至った過程を想定し、その動作を修正していきます。
たとえば、変形性膝関節症があっただけでも足関節に負担はかかります。
運動連鎖により前距腓靭帯が損傷したのであれば、直すべき部分は足関節でなく膝関節であると言えますよね。
疼痛評価
前距腓靭帯損傷の手術による侵入経路による疼痛変化はないと言います。
でも私の経験上、前方侵入より後方侵入のほうが痛みは多いような気がします。
特に後距腓靭帯も再建したり、踵骨の骨棘を切除した場合、前距腓靭帯のみを再建した方と比べると痛みは強いです。
関節のアライメント評価
足関節のアライメント評価な、主に動的アライメントを見て行きます。
前距腓靭帯損傷により足関節外側の不安定性がある場合、第5中足骨の不安定性に繋がっている場合も多いです。
第5中足骨粗面の可動性を徒手的に確認し、過剰に動いていると外側荷重になりやすいと言えます。
結果、足関節は外反位になりやすく、前距腓靭帯に負担がかかってきます。
ウィンドラス機構
ウィンドラス機構は、拇指伸展にて内側縦アーチが形成される(剛性を持つ)機能の事。
- 立位荷重時の動的・性的安定性に関与
- 足底筋膜が緊張し、安定性を高める
ウィンドラス機構のおかげで、足部の安定性が向上します。
ウィンドラス機能不全になると→歩行時の距骨の外反が起きやすくなる→底屈内反で不安定性が生じる→ウィンドラス機能の低下により剛性低下がひきおこり靭帯にストレスがかかる
という悪循環に。
だから拇指の屈曲筋力強化は必須になります。
前距腓靭帯再建術後の筋力強化
筋力強化は以下の3つを重点的に実施します。
- 拇指屈曲
- 後脛骨筋
- 長短腓骨筋
後脛骨筋、長短腓骨筋の筋力強化
後脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋は踵骨の回内外に関与しています。
同時に踵接地の安定性に関与。
これを強化することで踵骨の過剰な前方引き出しや、回内外の制動に一役買います。
筋力トレーニングはタオルギャザーや足関節外反運動をするといいですね。
関節鏡視下手術の問題点
関節鏡視下手術をすると、以下のような問題点が出てきます。
この問題点をどのように修正・改善させていくかが理学療法の腕の見せ所だと思います。
- 伸筋支帯周辺は筋性組織が無いので滑走不全が出やすい
- 足関節を背屈すると前が詰まるという訴え
- 恐怖心による荷重不足
- 踵骨の前方引き出し
傷による侵襲を考慮した動かし方を実践したり、指を屈曲させつつ背屈する(指筋の活動を抑制)ことで改善を促します。
また、アライメントやポジショニング指導なども有効です。

足を投げ出す姿勢は禁忌
まとめ
足関節の関節鏡視下手術後のリハビリテーションについてお話ししました。
基本的には前距腓靭帯や足関節周囲の機能不全を改善させることが目的となるので、足関節の評価が出来ないとダメということですね。
理学療法の介入の仕方で、痛みの頻度や質が変化するのもこの手術の特徴です。
痛みを取れる理学療法士になりましょう!
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