Star Excursion Balance Test(SEBT)の評価の目的と方法を解説します。
当院の新人向けに解説した内容なので、とても分かりやすいと思います。
▽Star Excursion Balance Test(SEBT)の動画▽
Star Excursion Balance Test(SEBT)
Star Excursion Balance Test(SEBT)は動的バランスを評価するスケールです。
Berg Balance Scale(バーグバランススケール)やFRTなどと同じですが、主に下肢関節疾患の方に実施される評価です。
BBSやFRTは両下肢を支持基底面とした動的バランスを見ますが、SEBTは単下肢を支持基底面とした動的バランスを見ます。
難易度が高く(そもそも片足立ちができないと評価困難)、スポーツやより激しい日常生活活動場面での動的バランスを評価することができます。
SEBTの目的
SEBTは足関節捻挫やACL損傷などの下肢障害の予測や競技復帰のための指標として信頼性を認められています。
SEBTをすることで
- 高価な装置を使用せず、簡便に動的姿勢制御能力を測定できる
- 高い信頼性
- 足関節不安定症や膝前十字靱帯不全などの下肢外傷に伴う機能低下を反映する
- リーチ距離の減少は下肢外傷発生と関連する
という報告もあり、スポーツにおいて様々な下肢外傷に伴う機能低下を検出し、下肢外傷発生を予測することが可能となります。
つまり、スポーツ選手(一般人でもOK)にSEBTを実施することで、その結果から「怪我のしやすさ」と「動的姿勢制御」を評価する上で非常に有益な検査方法であると考えられています。
SEBT評価方法
8方向にのびた線の中心で片脚立位をとり、支持足の踵や足尖が浮かないように足底をつけた状態を保ち、反対の足尖を、線上に沿ってできるだけ遠くへタッチさせます。
タッチ後は開始肢位まで戻ってくるように指示し、遂行可能な最大リーチ距離を測定します。
SEBTのカットオフ、基準
SEBTのカットオフは文献を探しても記載されているものはありませんでした。
これは、被験者の身長や筋力によって左右されるからであると考えられます。
では、数値をどのように活用するのか?というと
- 左右差
- 治療前後差
- 術前後差
を評価指標とします。
前方リーチが右足リーチ100cm、左足リーチ90cmだった場合、支持脚(この場合右)に弱化があると考えられます。
ある研究では、左右差が4cm以上あると怪我の発生率が2.5倍になるという発表があります。
治療前に100cmだったのが110cmになれば動的バランスが向上したと考えられますし、術前100cmだったのが術後20cmになったならバランス能力は術前の20%に落ち込んだと言えます。
8方向を測定することで、どの方向のバランスが悪いかを評価することが出来るんです。
SEBTに必要な股・膝・足関節の機能と筋力
SEBTは各荷重関節の機能が非常に重要になります。
足関節背屈制限が5度あるだけでも結果がかなり違ってきます。
ですので、医師の診断から障害部位を予測し、どの筋が弱化しているのか、どの部位に障害があるのかを考えなければなりません。
以下、各文献の報告です。
- ACL再建後のSEBT前方リーチは、健側も観測もリーチ距離は減少した
- ACL再建後のSEBTは下肢筋力(MMT)と比例する
- 大腿四頭筋以外の筋もリーチ動作に関与している疑いは強い
- SEBTにおいて関与する筋は膝の屈伸筋、股関節外転筋である
- その中でも膝関節屈曲金は特に重要な役割を担っている
まだまだ研究ベースとしては数が少ないですが、1つの指標になると考えられます。
SEBTを使った評価からわかること
SEBTは動的バランスの指標になり、特に下肢荷重関節疾患に有用な評価となりえます。
当院でも、整形外科疾患(下肢)においてSEBTを実施していますし、確かに靭帯損傷や半月板損傷患者の成績は低下することが分かっています。
この結果から、今後のリハの方向性や、鍛えるべき筋群などを考察し、術前リハ、術後リハに繋げていく事を目的としていきます。