超音波療法は年々進化しており、その基本的なメカニズムは変わりませんが、より「安全に」「使いやすく」設計されています。
超音波療法はこれからどんどん普及していきます。
なぜなら、患者自身が設定し、実行できるから。
超音波療法はセルフエクササイズとして患者に扱い方をレクチャーすれば、だれでも使えるレベルの簡単さになっています。
患者ができるものを、理学療法士が知らないようでは恥ずかしいですよね。
勉強がおろそかになりがちな「超音波療法」について学んでいきましょう。
超音波療法を簡単に言うと「音波によるマッサージ」
超音波ってなに?
と聞くと、理学療法士の7割が上手く答えられません。
あなたは答えられるでしょうか?
超音波療法とは、音波を照射することにより、肉体に何らかの器質的な変化をもたらす治療法のことです。
もっと言うと、音波という波を使い、振動を超回数与えるマッサージであるとも言えます。
マッサージは1秒に1回だが、超音波は1秒に100万回以上!
僕たちがマッサージをする場合、1秒間に1回くらいのリズムでマッサージをしていきます。
しかし、超音波療法は1秒間に100万回から300万回もの超高速での音波マッサージを実施します。
それにより、関節拘縮や筋硬結、血流不全を改善していくのです。
理学療法士なら知っておきたい!超音波療法の特徴
超音波療法の特徴を紹介します。
知っていないと恥ずかしいですよ。
超音波の周波数(振動回数)「1MHz」と「3MHz」の違い
超音波療法の周波数には「1MHz」と「3MHz」があります。
- 1MHz:1秒間に100万回振動する
- 3MHz:1秒間に300万回振動する
という意味で、これを「ミクロマッサージ効果」と言います。
それぞれに特徴があり、
- 1MHz:深部まで振動が届く(6cm~9cm)
- 3MHz:浅部に振動が届く(2cm~3cm)
と言われています。
これは、振動数の大きいほうが吸収率が高いから。
治療を目指す部位によって、この周波数を変更しましょう。
DUTY(照射時間率)
超音波の照射には「連続モード」と「パルスモード(間欠モード)」があります。
今では「DUTY」と言うようです。
知らなかった…。
でも言ってることは今も昔も同じで
- 連続モード(DUTY100%):照射時間の100%の時間照射する
- 間欠モード(DUTY50%):照射時間の50%以下の時間(任意で設定可能)照射する
の違いです。
この照射時間を減らすと、温熱作用が少なくなります。
なぜ温熱作用が少なくなるかというと、手を擦り合わせてみると容易に想像できます。
手をずっと擦り合わせてると温かくなってきますよね。
- 10分間ずーーーっと擦り合わせてるのが「連続モード」
- 10秒擦って10秒休むを繰り返してるのが「間欠モード(50%)」
どちらが温かくなりやすいかは想像できましたか?
厳密にいうと、DUTY50%は1秒間に照射と休止を何度も繰り返し、最終的に照射率が50%になるんです。
DUTYにより温熱作用がコントロールできるので
- 連続モードは温熱作用が高く「慢性期」の疾患に有効
- 間欠モードで20%以下にすれば「急性期」の疾患に有効
と言えます。
間欠モードはあまり温めたくない場合に使用しましょう。
もしも音波痛が出てしまった場合はDUTYを下げたほうが良いですし、炎症が落ち着いてきたらDUTYを上げるなど臨機応変に対応します。
導子の動かし方による効率の違い
よく超音波療法のストロークの方法で言われるのが
- 狭い範囲は導子をグルグル回転させながら行う(回転法)
- 広い範囲は導子を直線的に動かす(ストローク法)
と言われていましたが、現代でそれは推奨されていません。
伊藤超短波株式会社さんのスタッフに直接お話を伺った所、興味深いお話を聞けました。
超音波のストロークは「筋・腱・関節」の部位によって動かし方は異なる、というもの。
詳しく説明していきます。
超音波の筋への照射は筋線維に垂直(直角)に動かすと効率が3.3倍になる
筋腹に対して導子を動かすのは、筋線維に対して垂直(横断的)に実施すると良い、とのこと。
数々の研究結果から、回転法に比べて超音波の照射効率が最大3.3倍にもなったとか!
超音波の腱への照射は線維に対し並行に動かすと効率が1.3倍になる
筋腹に対しては線維に対して垂直でしたが、腱や靭帯に対しては並行に動かすと照射効率が1.3倍になるとのこと。
理学療法士が単にクルクルと超音波を当てる時代は終わりました。
狙う部位によってストロークを変えていきましょう。
超音波の関節への照射は導子を動かさず関節を動かす
あまり詳しく聞けなかったのですが、関節に対しては導子を関節に当てて動かさず、関節の方を動かしていくと良いそうです。
関節は動かすことで関節面や関節腔に変化が起こります。
その変化に対して照射したいのですが、導子を動かすと照射ムラができてしまい効率が低下するとのことでした。
【その他の動かし方のポイント】
- 筋緊張の緩和を目的とする場合、筋の起始、停止の筋腱移行部を交互に照射する
- 硬結へのアプローチや細胞の活性化を促す場合は患部に照射する
- 筋や腱をストレッチさせた状態で行うと効果的
- 導子面積の1.5倍程度の小さな範囲を動かす
などを意識して動かしてください。
超音波療法の適応と禁忌の覚え方
超音波療法の適応と禁忌についても知っておきましょう。
理学療法士が知っておかないと、患者に指導する時に困ってしまいますよ。
超音波療法の適応
【適応】
- 神経疾患、筋疾患など(リウマチ・関節炎・関節拘縮)
- 筋の損傷(筋断裂・腱断裂などを含む損傷)
- 神経病変(中枢神経疾患・末梢神経疾患・ニューロパチーなど)
- 組織瘢痕(創傷後の治癒)や褥瘡治癒
リハビリ現場で使う場合、主に「骨折後の治癒促進」「関節拘縮の予防」「変形性関節症の治療」「坐骨神経痛の改善」「筋硬結の改善」などに使われます。
適応疾患としても幅広く、「変形性関節症」「野球・テニス・ゴルフ肘」「肩関節周囲炎」「腰痛症」「オスグットシュラッター病」などに適応します。
使用の際は、医師への確認を必ず行いましょう!
当院で最近注目しているのは「骨折の治癒促進効果」で、2010年の先進医療netではこう記載されています。
骨折の治りを早めるために超音波を利用する医療機関が増えています。これは、「超音波骨折治療法」と呼ばれるもの。この治療法は、サッカーのデビッド・ベッカム選手や野球の松井秀喜選手が骨折治療のために受けたことでも注目されました。先進医療としては、全国で244の医療施設(2010年5月1日現在)が実施しています。
【先進医療net】
運動器不安定症などで骨折のリスクが高まるこの時代に、超音波療法は非常に期待のできる治療方法であると考えており、当院でも積極的な導入を進めています。
超音波療法の覚え方は「ホットパック」とほぼ同じ
超音波療法の効果は、ホットパックとほとんど同じです。
温めたらよさそうな部分を想像すれば、容易に適応にたどり着けると思います。
超音波療法の適応疾患と周波数や治療時間の一覧
「神経疾患」と言われてもピンとこないと思いますので、より具体的に適応疾患を挙げてみましょう。
また、その際の周波数やDUTYなども載せますので参考にしてください。
【疾患別・超音波治療の出力と時間の目安】
疾患 | 周波数 | 出力(W/㎠) | 時間 | DUTY | 照射ポイント |
肩関節周囲炎 | 1MHz | 0.5~1.0 | 5分 | 100% | 肩甲挙筋圧痛点 |
首~手の痺れ | 3MHz | 0.5~1.0 | 5分 | 50% | 首・肩:C3~5 手:C6~8 |
テニス肘 野球肘 |
3MHz | 0.5~1.0 | 5分 | 10~20% | テニス肘:外側上顆 野球肘:内側上顆 |
腱鞘炎・ばね指 | 3MHz | 1.0前後 | 5分 | 50% | 腱鞘をストレッチしながら |
椎間板ヘルニア | 1MHz | 1.0前後 | 5分 | 50% | L4・5 |
腰痛症 | 1MHz | 0.5~1.0 | 5分 | 100% | 圧痛部位 |
膝関節痛 | 3MHz | 1.0前後 | 5分 | 50% | 内外側裂隙 |
ガングリオン | 3MHz | 0.5前後 | 5分 | 100% | 障害部位 |
筋硬結(コリ) | 両方 | 1.0前後 | 5分 | 100% | 3MHzで2分照射後、1MHz |
捻挫 | 3MHz | 0.5前後 | 5分 | 10~20% | アイシング後に照射 |
超音波療法の禁忌
【禁忌】
- ペースメーカー
- 知覚障害患者
- 悪性腫瘍
- 血管疾患
- 成長骨端線
- 妊婦・胎児
- 眼球、脳、生殖器
- 脊髄疾患(椎弓切除術など)
- 合成樹脂や関節セメント部位(金属はOK)
基本的に超音波療法は温熱療法なので、温めてはいけない疾患が禁忌となります。
患者にセルフで行ってもらう場合、禁止事項として紙に書いてお渡しするなどの配慮が必要です。
覚え方は「光線療法」とほぼ同じ
禁忌を見てみると、マイクロ派や赤外線療法と同じことに気づくはずです。
唯一異なるのは、金属挿入部にも照射できること。
ここだけ間違えないでください。
超音波療法とリハビリの未来
超音波療法は、しっかりとやり方を伝え、設定すれば患者自身が導子を患部に当てて治療することができます。
最新の超音波治療機器には「音声ガイダンス」「液晶画面による分かりやすい説明」「コンパクトで壊れにくい導子」が採用されており、かなり扱いやすくなっています。
理学療法士は患者を評価し、超音波を当てるベストなポイントを導き出すことであとは患者に照射を任せる、という使い方ができます。
「患者も治療に参加する」という究極の形態がここに完成されますね。
超音波療法は世界的に評価されている!
超音波療法はオーストラリア、カナダなどでは使用頻度が非常に高いと言われています。
特にオーストラリアの医療機関での超音波の設置率は100%とか!
超音波治療器の性能も上がっている(ビーム不均衡率なども改善してます)ので、日本でもどんどん普及していってほしいと願っています。
【参考記事】
理学療法の歩み17巻1号 2006年1月14
■特別寄稿■
何故,超音波療法は世界的に最も評価が高いか>>>
実際に超音波治療器を使ってみて感じたこと
ぼくは超音波治療器をかなりの頻度で使っています。
そこで感じたネガティブな感想は「効果が表れにくい・体感しにくい」ということ。
ホットパックやマイクロ波は「温まったな」という感覚は得られますが、超音波はほとんど「無」です。
せいぜい「ちょっと温かいかな?」くらい。
あとは治療中ずっと動かしていなければならないので、大変。
超音波治療器は、その効果がわかりにくいから普及しないんだと思います。
しかし、適切に照射していけばその効果はかなり良好で、患者からも高評価を受けています。
ぼくら理学療法士はその効果を証明すべく、超音波治療を行った後はしっかりと評価し、効果を患者に伝えていくことが必要になるんです。
そうすれば、必然的に患者から選ばれていきます。
患者から「超音波は家でできないの?」と聞かれる
しっかりと効果を確認し、改善していることが証明されると患者は喜びます。
そして、「家でやりたい」というようなお言葉も頂けるようになります。
とはいえ、病院で使っている超音波治療器は安くても50万円以上しますし、とても自宅で気軽に使える代物じゃないですよね。
通常、超音波治療器は50万円以上するのですが、こちらの商品であればたったの23,500円で超音波治療ができるんです!
【特徴】
- 周波数は1MHzのみ(浅い部分)
- 照射モードは「100%」「50%」「5%」
- アメリカ製(日本語の説明書付き)
- 6か月保証付き
医療用機器ではなく、健康機器/ 美容機器の分類ですが、自宅で超音波療法を続けたい!という方に紹介しています。
まとめ:超音波療法の最大の特徴は2つ!
超音波療法の最大の特徴は
- 金属挿入部にも使用できる
- 患者が導子を持って患部に当てられる
の2つです。
これはほかの物理療法ではなかなかできない特徴です。
この特徴を生かし、ぼくは骨折患者(THA、ORIF)や関節拘縮患者(TKA含む)に積極的に使うようにしています。
物理療法の特徴を把握し、臨床に生かしていけたらいいですね。
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