整形外科にある物理療法ってどんな効果があるの?
どんな人に仕えて、どんな人に使っちゃダメなのかな?
【この記事で分かること】
- 牽引、バイブラ、ウォーターベッドの効果、目的
- 適応と禁忌
ここでは
- 頚椎/腰椎牽引
- バイブラバス(上肢/下肢)
- ウォーターベッド
について適応と禁忌を解説しています。
その他物理療法についてはこちらからご確認ください。
【合わせて読みたい物療】
牽引療法とバイブラバスはホットパックやマイクロ波に比べると地味な存在かもしれませんが、しっかりと使う事で非常に有効な効果を発揮します。
特に整形外科クリニックでは、温熱療法と共に大活躍する器具ですので、しっかりとその特性を学んでおかねばなりません。
ここではそんな物理療法
- 牽引療法
- バイブラバス(過流浴)
- ウォーターベッド
について適応と禁忌、注意点を学んでいきましょう!
あまり勉強する機会がない物療3種だね。ここで学んでおこう
牽引療法はともかく、バイブラやウォーターベッドに関して勉強する理学療法士は多くありません。
特にウォーターベッドなんて参考書を読んだことがある人も少ないのでは?
それぞれ立派な物理療法ですので、しっかりと効果を理解し、利用している患者に説明できるようになるといいですね。
頚椎牽引/腰椎牽引療法の効果と目的
牽引療法は臨床現場でもホットパックなどの温熱療法と同じくらいポピュラーな物理療法です。
牽引には2つ種類があり
- 頚椎牽引
- 腰椎牽引
があります。
また、引っ張るリズムも2種類あり
- 持続牽引:単位時間内ずっと引っ張っているもの
- 間欠牽引:1分引っ張って10秒休む、といったリズム(調整可能)
主に病院では間欠牽引が使われています。
決められた負荷で引っ張る事で、椎間関節を広げ、痛みや動きの悪さを改善していくことを目的としています
牽引をするに当たり、理学療法士が知っておかなければならないことは以下の3つです。
- 体重:牽引力を決定する際の指標とする
- 痛む部位:牽引する方向を決定する
- 痛む姿勢:牽引する姿勢を決定する
例えば、牽引をする方向や姿勢によって力の掛かり方が変わります。
患者の訴えを聴取し、ベストな方向を決定しましょう。
医者はそこまで指示してくれませんからね。
引っ張る力は
- 頚椎牽引:体重の1/10~1/5程度まで
- 腰椎牽引:体重の1/5~1/2程度まで
と、されています。
人によってはもっと引っ張ってくれ!なんていわれるかもしれませんが、医師に相談しつつ実施しましょう。
【牽引療法の効果】
- 椎間板を広げることで神経根の圧迫を改善
- 筋スパズムの軽減
- 牽引周囲筋のマッサージ効果
牽引療法の禁忌
牽引療法の特徴は、首や腰にベルトを巻き、それを引っ張るということです。
引っ張ってはいけない疾患を思い浮かべれば、禁忌は理解しやすいです。
【禁忌】
- 関節リウマチ:環軸関節の脱臼の危険があります。
- 関節炎:炎症性の関節疼痛がある場合は実施してはいけません。
- 悪性腫瘍:悪性腫瘍患者には基本的に物理療法は実施しないほうがいいでしょう。
- 骨粗しょう症:骨破壊の恐れがあります。
- 妊婦:特に腰椎牽引は禁忌です。
- その他牽引により悪化の恐れがあるもの:顎関節症や腎疾患、胃ろう造設患者など
物理的な牽引により体がダメージを受けそうな場合、牽引療法は避けた方がいいかもしれません。
特に、骨粗しょう症には十分注意が必要です。
子供にも実施しないほうがいいでしょう。
牽引療法の注意点
牽引力は徐々に上げていきますが、最初は体重の〇分の1というように決めておくといいでしょう。
頚椎牽引を実施する場合、牽引方向は前上方が基本です。
頚部屈曲位で引っ張らなければ、疼痛悪化の原因となりますので注意が必要です。
牽引療法が適応となる疾患と症状
牽引は主に除痛を目的とします。
牽引しながら温めることで、ホットパックと同じような効果も望めます。
【頚椎牽引の適応】
- 頚椎症:椎間関節の拡大による神経症状の改善
- 頚椎捻挫:急性期を過ぎたもの。交通事故によるもの
- 上肢神経症状:頚椎由来の痺れや冷感がある方
【腰椎牽引の適応】
- 筋筋膜性腰痛症:筋膜のストレッチングに効果
- 神経根症状:椎間関節の拡大による神経症状の改善
- 椎間板ヘルニア:椎間板圧の軽減、髄核の突出軽減
牽引によって、主に痛みが改善します。
しかし、目標となる体のパーツは椎間関節であり、そこには多くの神経が通っています。
当然、痛みを悪化させるリスクもあるということを念頭に置き、実施していってください。
物療全般に言えるけど、使い方を誤ると大変なことになるよ!
だから物理療法もしっかりと勉強しておきましょうね。
不十分な知識で実行する事は避けた方が無難です。
バイブラバス(過流浴)の目的と効果
バイブラバスは過流浴・水治療法とも言われ、温熱療法に近い物理療法です。
お風呂より小さめのタンクに42度程度のお湯を貼り、ジェットバスなどで患部を温めつつ運動をするものです。
上肢用と下肢用がありますが、目的は同じで、タンクの大きさが違うだけ。
主に骨折や肉離れなどで皮膚・術創部・筋が硬くなった患者に対し、実施される物理療法です。
【バイブラバスの効果】
- 血管拡張作用
- 温熱作用
- 皮膚伸張性の向上
※ホットパックやマイクロと違い、水中で指や足を動かす事が可能
バイブラバスの禁忌
主に入浴と同じように考えてOKです。それに加え、感染症患者にも禁忌です。
- 熱発患者:悪化の恐れがあります
- 心臓病患者:心拍数が増大するのでおすすめしません
- 動脈硬化:血圧の上昇による負担の増大が危惧されます
- 高血圧患者:同上
- アトピー性皮膚炎:皮膚炎の悪化が危惧されるため
- 結核患者:悪化の恐れがあるため
- 幼児、認知症患者:意思表示のできない患者
温熱療法の禁忌に加え、皮膚の過敏な方も禁忌です。水流による治療のため、皮膚刺激が多くなります。
バイブラバスの注意点
お湯の温度は42度とされていますが、水温によって生体変化が伴います。
42度のお湯では血管収縮作用と血圧の上昇が見られる
患者によっては、水温を変化させ、期待する効果を変えていくのも一つの手段です。
バイブラバスが適応となる疾患や症状
バイブラバスは気泡をジェットバスのように噴射し、皮膚にマッサージ効果を与えます。
また、お湯の中に患部を漬けることでじんわりと温めながらマッサージができる優れもので、皮膚の柔軟性を向上させ、血行を促進します。
【バイブラバスの適応】
- うちみ・打撲:血液循環がよくなり、治癒しやすくなる
- 関節拘縮:温熱療法と運動療法で改善が期待できる
- 皮膚の短縮:皮膚の伸張性向上により癒着の防止が期待できる
- 筋スパズム:温熱効果による改善が期待できる
バイブラバスはお湯に患部を漬け、ジェットバスでマッサージしながらお湯の中で関節を動かします。
温熱効果×マッサージ効果×運動効果の相乗効果によって可動域の改善がかなり期待できます。
特に骨折や肉離れなどで長期間ギブス固定をしていた患者に適応します。
血圧に注意しながら場合によっては水分補給もしよう!
ウォーターベッドの目的と効果
ウォーターベッドは整形外科クリニックで人気の高い物理療法で、主にマッサージ効果とリラクゼーション効果を期待します。
運動療法後のクールダウンによく使われます。
【ウォーターベッドの作用】
- マッサージ効果
- リラクゼーション効果
ウォーターベッドの禁忌
マッサージベッドなので、比較的安全に使用できますが、やはり禁忌はあります。
- 皮膚の弱い方:水圧で皮膚がダメージを受ける可能性があります
- 平衡感覚異常者:水の入ったベッドから転落などの恐れがあります
- 表在感覚異常者:皮膚刺激に気づかない恐れがあります
- 身長の不適合:ベッドに記載されている身長の範囲内での利用をおすすめします
- 重度の骨粗しょう症:骨折の危険があります
- 脊椎損傷患者:悪化の恐れがあります
- ペースメーカー患者:誤作動の恐れがあります
- 妊婦:不意な体調不良の原因になる恐れがあります
- 重度の肥満患者:ベッドの適応体重に乗っ取って使用しましょう
ウォーターベッドの注意点
患者がちゃんと指定の位置にセットされたら、スイッチを入れます。
肩の位置が決まっているはずですので、しっかりと確認しましょう。
マッサージ中は動かず、やむを得ず停止する場合(トイレなど)では、緊急停止ボタンを患者に渡し、十分な説明をします。
ウォーターベッドが適応となる疾患や症状
ウォーターベッドは主にリラクゼーションを目的としています。
- 筋疲労
- ストレス
- 疼痛
- 循環障害
- クールダウン
これらによく効きます。
時間は10分~15分ですが、あまり長い時間続けるのは避けましょう。
揉み返しのような症状が出てくるかたもいるようです。
調子に乗ると後で痛みがでたりするので注意!
まとめ:牽引とバイブラバス、ウォーターベッドも覚えておこう
- 牽引療法
- バイブラバス
- ウォーターベッド
どちらかというとマイナーな部類に入る物理療法ですが、使い方を間違えると思ったような効果が出てきません。
我々は理学療法士ですから、どんな生体反応がでるのかを予想しながら物理療法を実行していきたいですね。
こういう所で生理学の勉強が役に立つんですよ!
しっかりと物理療法を学んでいくことも理学療法士として必要案スキルだと思います。
その他の物治療法に関しては以下の記事をご確認ください。
【ホットパック/寒冷療法】
【おすすめ書籍】
基礎的な部分を抑えながら臨床に役立つ使い方も提案しています。
物理療法を学ぶのであれば非常におすすめです。