2019年、認定理学療法士・必須研修の1コマ目『EBPT Clinical Reasoning』で重要(試験に出そう)な部分をまとめました。
<return>
【認定理学療法士試験対策】共通問題テスト:医療安全、労務職場管理
EBPT(Evidence-based Physical Therapy)とは
患者に対する問題点や疑問点に対し
- 臨床研究による実証報告としての科学的根拠
- 理学療法士の臨床能力
- 施設設備や機器の状況
- 患者の意向や価値観
を統合した最適な臨床判断により質の高い理学療法を行うための行動様式
エビデンスとは
科学的根拠の高い情報、つまりバイアスのない方法で人を対象とした臨床研究データを、バイアスのない方法で分析して得られた結果。
エビデンスに求められること
- 臨床的であること
実際の患者を対象とした研究結果を重視する。
理学療法の分野では治療結果が最も求められている。
- 真実に近いこと
バイアスが小さい
偶然のバラツキが小さい
遅れが小さい
RCT(Randomized Controlled Trial)
比較する対照群と、処置群をパラレルに比較するデザインを採用した研究。
どちらの群に割り当てるかはランダムに行う。
ランダム化の意義
- 比較可能性の確保
偶然バイアスからのガード - 予測不能性
選択バイアスからのガード - 確率の導入
確率的な割り当ては妥当性が得られる
しかし結果として個々の症例に対する臨床判断においてEBPTが実践されている頻度は高くないのが現状。
臨床的観点における理学療法の構造
我々の運動療法
- 科学的根拠に基づいた『science』
- 個人の臨床経験に基づいた『art』
artの部分である
- 経験、能力の技能
- 観察力、推測力
- 手の当て方、力加減
このようなartの部分を科学的に証明することが難しいのが問題!
EBPTへの誤解と批判
解答:臨床現場はケースバイケース
- 医療者の臨床的な技能
- 研究結果から得られたエビデンス
- 患者自身の意向や現場の状況
の3つが必要。
外的なエビデンスのみでは絶対的な政界がでるというものではない。
解答:EBPTが規定するのはその時点で最も信頼できるエビデンスを使えばよい
解答:EBPTは今までの医療を出発点としており、批判するものではない。しかし、理論・基礎研究・動物実験だけで得られた情報だけでは臨床の指針として十分ではない。
エビデンスを使う
エビデンスを使うためのステップ
- 臨床上の疑問点の抽出と定式化
- 臨床上の疑問点に対する情報の検索
- 得られた情報の批判的吟味
- 得られた情報の患者への適応の検討
- プロセスおよび結果の評価
臨床上の問題点に対する情報の検索
変形性膝関節症について
- 推奨グレードA:信頼性、妥当性があるもの
- 推奨グレードB:信頼性、妥当性が一部あるもの
- 推奨グレードC:信頼性、妥当性は明確ではないが、一般的に使用されているもの
- A:行うように勧められる強い科学的根拠がある
- B:行うように勧められる科学的根拠がある
- C1:行うように勧められる科学的根拠がない
- C2:行わないように勧められる強い科学的根拠がない
- D:無効性または害を示す科学的根拠がある
- 1:システマティックビュー/RCTのメタアナリシス
- 2:1つ以上のランダム化比較試験による
- 3:ランダム化比較試験による
- 4a:分析疫学的研究(コホート研究)
- 4b:分析疫学的研究(症例対象研究、横断研究)
- 5:記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
- 6:患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見
理学療法評価(指標)の推奨グレード
- 問診
- 既往歴、ACL損傷・再建術、半月板損傷・部分切除と全切除
- 肥満
- 単純X線検査
- 磁気共鳴画像検査(MRI)
- 下肢アライメント
- 疼痛
- 膝関節周囲の筋力評価
- 歩行速度、ストライド、ケイデンス
- 下肢関節の運動学的変化
- 下肢関節の運動力学的変化
- 生活機能の評価(自己効力感、FIM、BI)
- MOS short from36(SF-36)
- JKOM
理学療法介入の推奨グレードとエビデンスレベル
- 減量療法
- 運動療法
- 筋力増強運動
- 有酸素運動
- 物理療法
- 超音波療法
- 患者教育と生活指導
- 協調性運動
- 温泉療法
- TENS療法
- 物理療法の複合使用と運動療法の併用
臨床上の疑問点に対する情報の検索
大きな間違い
EBMとはエビデンスに基づくガイドラインを作成し、それによって診療を統一すること
エビデンスに基づいたガイドラインとは、診療実践に利用するための二次的情報に過ぎず、個々の臨床実践を過剰に拘束するものではない
得られた情報の患者への適応の検討
EBMの本質は臨床判断に如何にしてエビデンスという一般情報を利用するかという方法論。
EBMは具体的な診療プロセスであり、エビデンスは利用される情報にすぎない。EBMの中心はエビデンスではなく、診療実践そのものである。
クリニカルリーズニング
対象の訴えや症状から病態を推測し、仮設に基づき最も適した介入を決定していく心理過程。仮説と検証する工程を繰り返す。
クリニカルリーズニングの概念
- 問題解決、目標指向的な思考
問題解決を目的とした思考過程 - 一般的理論を個別の対象者へ適用する実践活動
情報を解釈し、仮設の生成と修正を繰り返す - 認知的過程
認知過程の一部を視覚化し、診断判断の流れやフローチャートとして示される
クリニカルリーズニングの主な要素
- 診断学的リーズニング
機能、活動、参加に関するメカニズムの把握 - 双方的・共同的リーズニング
相互交流に基づく共同意思決定 - 語りによるリーズニング
経験に対する認識や考えの理解 - 予測的リーズニング
期待される効果の予測と推測 - 教育的リーズニング
対象の理解やマネジメント能力の把握 - 倫理的リーズニング
医療倫理 - 現実的リーズニング
社会状況や環境に応じた現実的な意思決定
診断学的リーズニング
- 患者に生じた問題点の医学的原因とその治療戦略について考え、行動すること
- 医師による正確な診断が必須
- 理学療法士は患者の身体的側面に重きを置く
- 原因組織と関連因子について十分考察する
語りによるリーズニング
- 問診などの対話を通じて患者の心理的側面について考え、人を理解し行動すること
- 医科学的問題だけでなく、患者の人的要素を深め、意思決定を尊重することで自己効力感を高める
- 理学療法士の思考のみによて獅子決定がされず、患者と共同したプロセスを踏む
診断学的リーズニングと語りによるリーズニングは独立しているが、相反するものではない。
クリニカルリーズニングの進め方
- 活動能力および制限
- 参加能力および制限
- 経験に基づいた患者自身の考え
- 病理生理学的メカニズム
- 身体的機能障害とそれに関連した原因組織
- 問題を発生、持続させている関連因子
- 身体機能評価および治療における要注意事項と禁忌
- 対処方法と治療
- 予後
リーズニングエラー
- 特定の治療法、思想を重視し、適切なリーズニングが行われていない
- 情報収集が不十分、または情報を均等に扱わない
- 情報を確認せず自己判断してしまう
- 仮説設定が不十分
- 初期認知の際に問題を誤って考察し、固執してしまう
- 検査技術の未熟さから十分な仮説を検証できない
- 治療手技の選択ミスと実施ミス
- 再評価時の検証ミス
- 臨床に関連する知識が不十分
膝OAに対するクリニカルリーズニング
基礎知識
膝OAとは?
膝OAの保存療法で遭遇する問題
痛みの質、部位、強度が患者によってバラバラになる
評価:推奨グレードAのものを実施
膝OAの疼痛原因
- 関節軟骨の骨髄ない静脈のうっ血
- 関節法の骨棘アドによる骨膜炎
- 変形や拘縮に伴う筋腱付着部炎
発生原因
- 骨膜
- 関節法、靭帯
- 膝周囲筋
- 筋腱付着部
診断学的リーズニング
- 縫工筋テスト
- 薄筋テスト
- 半腱様筋テスト
- 半月板の知識
- マックマレーテスト
- 膝OAでは様々な病態により症状が変化する
- 疼痛の原因を可能な限り識別すること
- その組織のどのようなストレスが加わっているのか?
- 疼痛を再現できるか?
再現できれば、その条件で加わるメカニカルストレスを軽減することが治療のポイントとなる
問診
- いつ?
- 何をしたら?
- どこが?
- どのように?
痛むのか?
圧痛所見
- 圧痛の有無
ある:圧に反応する病態(炎症、損傷)
ない:圧に反応する病態がない(末梢神経原生疼痛など)
病態を考慮して詳細な評価を組み合わせることで疼痛の原因候補を挙げることが可能。
まとめ
- 患者の症状の明確化
- 症状に関する語りによるリーズニング
- 症状発現に関与する異常な運動、動作戦略の発見
- 異常な運動、動作戦略に関与する運動機能障害の特定
- Total Approachとしての介入
- 症状の改善、目指すべき健康状態が獲得されたのか確認
けっこうまとめたつもりですけど、範囲がすごく広いので大変です。
ポイントも絞りにくいので、全体的に浅く覚えておくほうがいいかもしれません。
考察(試験後追記)
EBPTに関しては範囲は広いですが、出題傾向はかなり絞られています。
「クリニカルリーズニング」「エビデンスレベル」についてしっかりと抑えておけばOKです。
<next>
【認定理学療法士試験対策】専門問題テスト:肩関節疾患の理学療法