【初めての実習指導】2020年から本格導入!クリニカルクラークシップでの指導方法を説明

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2020年から理学療法士の実習形態が変わるのをご存知でしょうか?

 

【従来との変更点】

  1. 通所・訪問リハビリも臨床実習の対象となる
  2. 実習指導者の経験年数が3年から5年目以上に変更になる
  3. 実習指導者は厚生労働省が指定する「臨床実習指導者講習会」に参加する必要がある
    詳しくはこちら>>>【速報!】理学療法士が臨床実習指導をするには厚生労働省が指定した講習会を修了しなければならない! 
  4. 臨床参加型の臨床実習に変更することを努力規定とする

 

以上のように変更されます。
今回は『4.臨床参加型の臨床実習に変更することを努力規定とする』について詳しくお話をしていきたいと思います。

臨床参加型実習は、クリニカル・クラークシップ(Clinical Clerkship : CCS)と呼ばれ、従来の学生が見学するだけの実習方式でなく、実際に診療に参加することで、実践的なスキルを高めていくという指導方式です。

 

まだ十分に周知されていないと思いますので、講習会や研修会でぼくが学んできたクリニカルクラークシップについて分かりやすく説明していきたいと思います。

実際に5年ほどクリニカルクラークシップで指導していますが、ぼくの学生のころとは大きく考え方が異なっていますのでぜひご参照ください。

 

クリニカルクラークシップにおける理学療法学生の教育目標

理学療法学生に向けてぼくたち指導者(以下:CE)が目的とするものは、学生が資格取得後に保健・医療に貢献し、理学療法や医学の発展に寄与する能力を身に付けさせることです。

ただ勉強ができるだけでなく、医療者として、そして人間として温かみのある対応を身に付け、常に高みを目指していくために努力し続けましょう。

という壮大なテーマとなっています。

臨床参加研修の教育理念(教育の戦略)

2020年から始まる臨床実習は、臨床的経験の蓄積と実用的なスキルの獲得を目的としています。
従来型の実習にくらべ、対象者への介入頻度も圧倒的に多くなり、見学時間はグッと減少します。

つまりどういうことかというと、より実践的で実用的なスキルと対応力を臨床実習の場で学ぶといくこと。

カンタンに言うと『入職時時の即戦力を育てる』と言ってもいいです。

 

基本原則は「研修生として診療チームに参加し、実体験を通じてセラピストとして修得すべきスキルと態度、価値観を育成していく」こと。

そしてぼくたち指導者は、実習生を学生として扱うのでなくパートナーとして扱い、すべての臨床業務に参加してもらいます。

 

クリニカルクラークシップにおける従来の実習との変更点

臨床参加研修では患者を担当しません
従来型は症例を学生が丸ごと担当し、評価から治療までを実施していましたが、臨床参加研修ではそのような研修を実施しません。

そのため、デイリーノート・課題レポート・レジュメでの指導・症例発表会も行いません
症例を持ちませんから。

そして、研修施設での総括評価で、学生に対して合否判定を実施しません
もし質の悪い学生がいた場合、ぼくたち実習施設はその旨を学校教員に伝達し、学校側が采配をするというシステムになります。

 

臨床参加研修の1日の流れ

研修生の1日の流れは僕たちと同じです。
朝から指導者と常に帯同して同じ症例を一緒に治療していきます。

もちろん、最初は見学と説明から入りますが、それで終わるのではなくどんどん臨床参加をしてもらいます。
そして、ぼくたちと一緒に症例に対してどのような理学療法を提供できるのかを共に考えていきます。

臨床終了後にチェックリストを用いてフィードバック(1日の振り返りと翌日のプランニング)をし、研修生は自宅では自己学習に励んでいただきます。

 

チェックリストの使用方法

クリニカルクラークシップでは、研修生がどの程度まで臨床体験が進んでいるかを確認するためのチェックリストを使用します。

チェックリストの様式は、各養成校によってさまざまですが、使い方はほぼ同じです。

 

  1. 1日の臨床終了後にCEと研修生はその日に体験した項目にチェックを入れる
  2. 「見学・模倣」は研修生が学んだと思ったら鉛筆でチェックし、そのチェックの部分をCEと確認しCEの了解を得た部分をボールペンで清書する
  3. 「実施」はCEが直接判断し、記入をする

 

【注意点】

チェックリストは研修生の到達度を評価するツールでなく、いままでの研修の積み重ねや、まだ体験できていない項目を確認するためのツールです。

チェックリストに記載されている項目から研修生の能力に合わせて技術項目を選択していきます。

 

臨床指導の基本的な進め方

図のように基本的に学生の研修はぼくたちCEのパートナーとして常に行動を共にし、CEの担当するすべての症例に関与していきます。

実際のかかわりについては「見学・模倣・実施の原則」(後述します)に基づき、研修生のできることから実施していきます。

 

指導者として研修生にすべきこと

  1. パートナーとしての臨床参加
  2. チェックリストによる技術・知識の習得度の確認
  3. クリニカルノートを使用したディスカッション・フィードバック
  4. 業務終了後のチェックリスト・出欠表の記入
  5. 翌日のプランニング

 

 

OJT(on the job training)による教育方法

OJT(on the job training)とは、書面上での指導でなく実際に症例に向き合い、技術を指導する中での学び方を言います。
ぼくたちCEのパートナーとして臨床業務に参加し、その中で学びを得ていきます。

対義語にOff-JT(off the job training)がありますが、これは従来型で多かった書面上の指導(レポート・レジュメ・デイリーノートなど)のことです。
クリニカルクラークシップでは、Off-JTの指導は一切行いません

 

しかし、研修生もいきなり臨床参加はできませんので、最初は周辺業務から始め、徐々に中心業務に移行させていきます。

 

  • 周辺業務:患者の送迎・平行棒の高さ調整・介助サポートなど
  • 中心業務:評価・治療の実施

 

OJTでは、技術や考え方も臨床業務の中で実際に体験してもらい、そこからディスカッションすることでより濃密な臨床体験をすることができます。
そうすることで、研修生はより現場に適した「問題解決能力・問題点抽出能力・プログラム立案能力」などを身に付けることが狙いです。

 

そういった臨床体験を全症例で経験してもらいます。
ぼくたちは症例の情報をできるだけ開示し、研修生は知識と技術を磨き、修得した技術を全症例に対して実施します。

この方法を「技術単位診療参加システム」といいます。

 

技術単位診療参加システム

クリニカルクラークシップでは、従来の患者担当制に代わって「技術単位診療参加システム」を用います。

理学療法士に必要とされている技術ごとに、指導者が安全に自立して実施可能であると判断した項目について、研修生はその技術を受け持ちます

 

図のように、ROM-exを一人でやっても問題ないと判断した場合、その技術を複数の症例に受け持ってもらいます。
これが臨床参加ですね。

同じ技術を疾患や重症度の異なる症例で実施することで、技術の深みや多様性、個別性を体験させることが狙いです。

 

AさんにできるけどBさんにはできない、という技術は臨床上役に立ちません。
誰にでも、同様のレベルで、安全管理を保ちつつ実施できることを目的とします。

 

技術単位の構成と修得すべき技術(スキル)

  1. 社会的スキル:ルールやマナーといった社会人として必要なスキル
  2. 臨床的運動スキル:検査測定や治療の技術
  3. 臨床的認知スキル:多くの情報から必要なものを選択したり、臨機応変に立ち回るスキル

 

特に臨床的認知スキルは「暗黙の了解」など、経験でしか学べない(見学しているだけでは身につかない)ものなのでクリニカルクラークシップがおおいに役立ちます。

 

  • Aさんは枕を高めに設定する
  • Bさんは寒がりだからタオルケットを用意する
  • Cさんは自分でやりたがるので、手を出すと怒られる

 

などが認知スキルです。
こういった情報はCEから指導はうけますが

 

  • Aさんの枕の高さはどれくらいがベストか
  • Bさんはどれくらいの厚さのタオルケットが必要か
  • Cさんに介助を入れるべきタイミングはどこか

 

といったことは自分で経験しなければわかりません。
こういうスキルを持った研修生は、実際の現場でもかなり強いです。

 

「見学・模倣・実施」の原則

技術の習得に向けて実施していくのが「見学・模倣・実施」の原則です。
研修生が技術を習得するまでのプロセスとして

 

  1. 解説を伴う十分な「見学」
  2. 手本を見せながら実施する「模倣」
  3. 技術項目を1人で実施できる「実施」

 

と進んでいきます。

 

見学の原則

「見学」は研修生が指導者の技術に関して解説を受けながら観察する行為・状況を指します。
ただ見ているだけでは無意味なので、目の前の状況を理解しようとする姿勢を持つことが非常に重要。

だから指導者もそういう見学になるよう配慮し

 

  1. どんな障害(や目標)に対して
  2. どのような手段で
  3. 何をしている

 

というのを解説しながら診療にあたります。

CEもこの「解説するスキル」が非常に重要で、難しい言葉を学生でも分かるようにかみ砕いて教えなければなりません。

 

もちろん、その場で説明できない情報がある場合(認知症や家庭環境、お金のことなど)は見学後のディスカッションで共有していきます。

 

模倣の原則

「模倣」は研修生が複数回見学した技術を、CEの指導を受けながらであれば実際に行える行為・状況を指します。
技術指導で必要な体の使い方や、力加減などのコツを手本を交えながら実際に体験してもらいます。

この繰り返しの模倣が、臨床スキルとしてめちゃくちゃ役に立ちます。
CEはこのスキルを研修生に獲得してもらえるように

 

  1. 指導をしながら
  2. 真似を繰り返させ
  3. CEとの違いを修正しながら
  4. 反復する

 

こうすることでその技術はより強固なものとなっていきます。

 

実施の原則

「実施」とは研修生が複数回模倣した技術をCEの監視下であればリスクを理解したうえで行える行為・状況を指します。

ある技術単位を1人で実施できるという判断を下すのは我々CEですが、その判断基準はあいまいです。
単軸関節である膝関節のROM-exと、多軸関節である股関節のROM-exでは難易度が違うのもですが、模倣を繰り返す中で判断できる能力もCEには求められます

実施に至った技術は基本的に研修生に行ってもらい、どんどん経験値を積んでもらいましょう。

 

基本的にぼくたちCEは、研修生が技術を習得するための手助けを行うことが目的となります。
研修生が実施できる項目を増やしていき、研修生の能力をどんどん伸ばしていきましょう。

 

これが冒頭で述べた『入職時時の即戦力を育てる』につながっていきますね。

 

クリニカルクラークシップの教育上の注意点

最後に、注意点をまとめてみましょう。

 

【オリエンテーションの実施を徹底】

オリエンテーションとして「施設概要・検査用具・施設見学」などを実施します。
研修生を「職員(パートナー)」として扱うために非常に重要です。

もちろん、他部門にも一緒にあいさつに行くなど、配慮が必要です。

 

【リスク管理についてはCEが行う】

リスク管理については研修生でなくCEが行います。
CEがリスク管理について説明し、管理能力がつくような教育を実施していくのですが、研修生にそのすべてを任せることはしないようにします。

 

【やってみろ・調べてこい・考えてこいの指導はしない】

このような指導は原則として行いません。
あくまでも「見学・模倣・実施」の原則にのっとり実施することが重要で、OJTの指導を徹底します。

 

【ダブルバインドの実施はしない】

ダブルバインドは「2つの考え方」という意味です。
CEの指導に対して、別のセラピストがその考えを覆すような指導は研修生の混乱を招くので行いません。

ですので、クリニカルクラークシップでは「スーパーバイザー・ケースバイザー」といった形式をとらないのも特徴です。

 

以上になります。

 

2020年から理学療法士・作業療法士の臨床実習の方法が変化します。

厚生労働省は「努力規定とする」と言っていますが、おそらく全ての臨床実習が数年以内にクリニカルクラークシップに変更されると思います。

 

指導者の経験年数も5年以上に引き上げられたということは、より高い臨床実習の教育水準を保っていきたいという意思の表れです。

逆に言うと、今の教育水準は低い!と言われているような気もします。

 

研修生を「単なる邪魔者扱い」するのでなく、臨床実習を通して「来年4月に来てもらうために今から教育しておこう!」みたいなイメージを持てば、ぼくたち臨床現場の教育水準も上がるのではないかと考えます。

 

ルールが変わるから取り組むのではなく、よりよい実習体験を研修生にしてほしいと考え、クリニカルクラークシップに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

 

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