TUGの実施方法とカットオフが知りたいな。
TUGって何を見る検査なんだろう?
【この記事で分かること】
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TUGを評価する理由
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TUGのカットオフと実施方法
【TUG】Timed up&go test
理学療法士なら、誰もが1度はやったことのある評価ですが、この評価って何を見るものかご存知ですか?
教科書をめくっても、詳しい方法や評価理由は載っていないので、ここで解説していきたいと思います。
【TUG】Timed up&go test は何を見るかというと『バランス能力』です。
臨床の現場において、バランス練習は非常に重要なプログラムとして位置づけられているのは周知のとおり。
しかし、患者のバランス能力によって処方する運動は異なりますので、そのバランス能力の評価をしなければなりません。
その時に役に立つのが【TUG】Timed up&go testなんです!
今回は、バランス評価の中で、転倒リスクを評価するのに適した評価、Timed up&go test(TUG)について実施方法とメリット、デメリット、適応をお話しします。
Timed up&go test(TUG)をすることで得られる情報
Timed up&go test(TUG)は何を見る評価か?というと
- 歩行能力
- 動的バランス
この2つをを総合的に判断するテストとして考案されたものです。
その複合的な動作の観点から、主に転倒リスクを評価するものとして臨床的に用いられています。
Berg Balance Scale/BBS(バーグバランススケール)や、Functional Reach Test/FRT(ファンクショナルリーチテスト)もバランスの評価ですが、この2つははその場から大きく動かないことを前提としています。
しかし、Timed up&go test(TUG)は移動することで、動的なバランス能力そのものを評価する、ということですね。
これがその他のバランス評価と大きく異なることといえます。
Timed up&go test(TUG)の信頼性
Timed up&go test(TUG)は
- 椅子に座る
- 立って歩く
- 目印を旋回し、戻る
- 椅子に座る
といった複合的な動作をみます。つまり、その動作の中に
- 筋力
- バランス
- 反応
- 歩行
の評価が含まれているので、高齢者の歩行バランスの能力を評価する上で非常に信頼性は高いです。
Timed up&go test(TUG)で分かる事とは?
Timed up&go test(TUG)をすることで、その患者さんの転倒リスクのほかにロコモーティブシンドロームの疑いが分かります。
Timed up&go test(TUG)を知ることでその患者の転倒リスクを把握し、その対策を打ち立てることが可能となります。
ですので、TUGは転倒して病院に入院してから実施するものでなく、本来であれば転倒するまえ、健康な状態で実施することが望ましいのです。
Timed up&go test(TUG)を実施するにあたって知っておきたい方法と準備
TUGは比較的簡単に実施できますが、その実施方法に細かいルールがあります。
まずそれをしっかり把握し、かつ準備も怠らないようにしましょう。
TUGは実施する場所や時間によって再現性がかなり変化します。
薬を飲んだ時間や食事を摂取した時間などを考慮し、最も適した時間を選ぶ配慮も必要となります。
Timed up&go test(TUG)で準備するもの
TUGを実施するにあたり、準備するものがあります。
- ストップウォッチ
- 椅子(肘掛けの有無は問わない・椅子は両足底が床にしっかり着く高さ)
- コーンなどの目印
これらを準備し、評価に臨みましょう。
Timed up&go test(TUG)の環境設定
まず椅子を置き、その椅子(椅子の前足)から3m先にコーンなどの目印を置きます。
この際、3mの地点はコーンの奥側で距離を取ります。
※手前で取ると、その分距離が伸びてしまうので注意!
【画像】
必要であれば、床にカラーテープなどでマーキングし、次回以降も同じ場所で測れるように目印をしておくと準備の手間が減ってよいです。
Timed up&go test(TUG)の実施方法
- 【 開始肢位】背もたれに軽く背中を付く。肘かけは使用しなくてもよい。両足は地面に着いた状態とする。
- 【デモンストレーション】やり方を理学療法士が一度見せるとよい。
- 【開始】開始のタイミングは患者に任せ、臀部が椅子から離れた瞬間にストップウォッチをスタートさせる。
- 【実施】3m先の目印を回って、再び椅子に座るまでの時間を測定する。その際、転倒リスクがある場合は邪魔にならないよう一緒についていく。
- 【終了】臀部が椅子に接地したところでストップウォッチを止める。
- 【評価選定】2回実施し、早かった時間記述する。その際、小数点第一位までをご記入し、それ以下は四捨五入する。
Timed up&go test(TUG)を実施する上での注意点
- コーンを旋回する場合は、左右どちらでも構わない。
- 最大速度で歩行させる。
- 走ってはいけない。(両足支持期があることを確認する)
- 日常で歩いている方法で実施する。(常に杖を使用しているなら杖歩行で実施。歩行器なら歩行器。)
Timed up&go test(TUG)のカットオフ値
日本整形外科学会は運動器不安定症を判断する基準として、TUGテストのカットオフ値を「11秒以上」としています。
詳細は
公益社団法人 日本整形外科学会「運動器不安定症の定義と診断基準」
をご覧ください。
簡単に抜粋すると
機能評価基準
①日常生活自立度判定基準ランクJまたはAに相当
②運動機能
1) 開眼眼片脚起立時:15秒未満
2) TUG(3m timed up-and-goテスト):11秒以上
とされています。
臨床でのカットオフ値は
- 10秒以内:60~80歳代であれば正常である
- 13.5秒:転倒する恐れがある
- 20秒:屋外の外出は可能だが不安がある
- 30秒以上:日常生活動作に介助が必要である
とされています。
さいごに:Timed up&go test(TUG)を実施し、転倒リスクを知ろう
Timed up&go test(TUG)は準備や説明が比較的大変であり、患者さんの理解力も必要になります。
また、評価の中でも比較的危険度が高いものとなります。
そのため、臨床経験の浅い理学療法士や、学生が実施する場合はしっかりと指導を行い、十分な安全の配慮が必要です。
Timed up&go test(TUG)を実施することで下肢筋力・バランス・歩行・転倒リスクがわかります。
検査結果を鵜呑みにするのもよくないのですが、この結果から、より患者さんの身体機能を知り、理解を深めることで治療に役立てていただけると幸いです。