屋外歩練習は自宅に帰るために必須といっていいほどの練習です。
しかし、ただ練習しても意味がないのはご存知でしょうか。
しっかりと屋外歩行の特徴を理解し、評価を進めていかなければなりません。
【屋外歩行の評価手順】
- 屋内での評価をする
- 屋外歩行し、評価する
- 屋外での問題点を抽出し、リハビリをする
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この繰り返しを行うことで、徐々に屋外歩行のレベルが上がっていきます。
なんとなく屋外歩行をしている理学療法士のあなた、ちゃんと屋外歩行「効果と目的」を知っておいてくださいね。
屋外歩行の必要性
屋外歩行は病院や自宅の外にでて歩くことです。
屋外歩行をすることで、リハ室や病棟内を歩行練習していた時とは比べ物にならないくらい良い効果をもたらすことができます。
単に屋外と言っても、屋外は
- 病院の敷地内
- 家の庭
- 一般道
- 駅構内
- 商業施設(ショッピングセンター)
なんかも屋外に含まれます。
要は自分の身の回り生活活動圏を抜け出した場所の総称であり、室内であったもそこが自分の身の回り生活活動範囲外であれば、屋外と呼びます。
屋外歩行は人間が自立した生活をするにあたって必須条件です。
- 買い物をする
- 病院に通う
- デイケアに行く
- お茶会に行く
など、必ず『野外』での活動があるはず。
そこで、どう動くか、どう動けるかを我々セラピストは評価し、問題ないかを判断します。
その判断基準の1つが屋外歩行なんです。
外出しないと起こる弊害
すでに自宅生活をしている人も、『屋外』での生活が自立していなければ、行動範囲の狭小化が起こります。
- 引きこもり
- 運動不足による廃用
- 他社交流の減少からくる認知症
様々な状況に陥ることが考えられます。
ですので、『外を歩く』というのは、自分の体をメンテナンスする上でかなり重要なポジションを占めているんです。
もっと言うと、屋外歩行ができない人は、健康な生活を営むことが出来なくなるんです。
屋外歩行の必要性は、外出機会を得ることで人間らしい健康な生活を営むことにあると言えます。
屋外歩行の目的
屋内と屋外ではたくさんの違いがあります。
気温も違うでしょうし、風もあります。
多彩な状況判断が必要になってくるので、その判断力を磨くことも屋外歩行練習の目的です。
そして、屋外歩行をする目的は大きく3つです。
- 床面の凹凸への対応
- 周囲の景色や環境の変化への対応
- 周囲状況に合わせ自分の動きを変化させる
この問題を改善し、適応できなければ屋外歩行を自立させることは困難だと思います。
①床面の凹凸への対応
最近のバリアフリーの流れから、室内は段差がかなり解消されています。
それは病院も同じで、段差や凹凸のある病院ってほとんどないのでしょうか。
たまに老朽化で傾いたりしている所もありそうですが、基本的に室内に段差はありません。
しかし屋外では地面に細かな突起があります。
- アスファルトの凹凸
- 歩道と道路の切れ目
- 芝生
- 砂利道
- 視覚障碍者用点字タイル
- 排水溝などのグレーチング
など様々な状況が思い浮かびますよね。
そして、それは基本的に自宅の近くにも多数存在するはずです。
私の家前はアスファルトの道路ですが、敷地内はコンクリートの駐車場があり、その先の玄関に向かう場所は砂利敷きでしかも飛び石もあります。
家に入る際は必ずこのような場所を通らなければならないのです。
屋外歩行である程度の床面状況を察知し、その環境に慣れるというのは非常に重要な事。
屋外歩行をすることで足底感覚の入力を促進し、床面状況に適した『対応』を示せるようになります。
これは、室内では得られない感覚で、例えば砂利などの未舗装路なんかで効果が発揮されます。
やっておいて損はないですよね。
②周囲の景色や環境の変化への対応
屋外は屋内とくらべて入ってくる情報が多いです。
- 床面の状況
- 信号機
- 歩行者
- 段差
- 太陽の光
- 風
- 鳥の鳴き声
- 騒音
これらの情報が飛び交い、それが歩行の妨げになることも多いです。
その情報をいかに処理して歩行に集中できるか、という練習が必要になってきます。
もちろん、その多くの情報の中から必要な情報を取り入れていく能力も重要です。
反応するべき情報と反応しなくていい情報を仕分ける、ということですね。
たまに居ませんか?自分は何も喋っていないのに、隣のベッドのセラピストの会話に反応してしまう患者さん。
しかも性別や声色が全く違うのに。
これって話に集中しているから反応したのではなく、なんとなく聞いてたら何となく声が聞こえたからとりあえず反応しておいたにすぎません。
ちゃんと自分に必要な情報か否かを判断でできていない証拠です。
これは『会話への反応』なので大事には至りませんが、仮に横断歩道の信号で似たような状況になったらどうでしょう。
歩行者信号が赤の時、当然車の信号は青ですよね。
ではその識別が出来ていなかったら?
十字路で自分が進むべき方向の歩行者信号と、対角の信号を見間違えていたら?
病院では『危なかったね』で済む話が、屋外では『生命に関わる』ことに成りかねないんです。
だから屋外歩行で確認する必要があります。
周囲の状況に慣れること。
これは非常に重要なプロセスになりますよ。
③周囲状況に合わせ自分の動きを変化させる
屋外では自分以外にも生活している人がいます。
- 同じ方向に歩く人
- 正面から向かってくる人
- 自転車で移動している人
- 犬の散歩をしてる人
- 急に店から出てくる人
その人たちに気を付けていかないと、衝突などの事故につながります。
でもそれば病院でも同じですよね。
では、病院内と屋外でなにが違うかというと、自分に対して気遣ってくれないということです。
病院であれば、周りの人が避けてくれたり、道を譲ってくれますが、屋外ではそうはいきません。
正面から来た人は止まってくれませんし、後ろから来る人はガンガン追い抜いていきます。
そんな状況で道路の真ん中を歩いていたら間違いなくなんらかのアクシデントに見舞われてしまうでしょう。
そんな周囲への『予測と対応力』も養っていかなければなりません。
自分の身は自分で守るしかないですからね。
対応の方法にも変化をつけていく必要があります。
病院では正面から人が来たら『立ち止まる』ことで危険回避しているような患者さんも、屋外ではそうはいきませんよ。
駅前なんかに行ったら『正面から来る人』ばっかりです。
そこで、危険回避として『立ち止まる』を選択したら、そこから1日中動けなくなってしまいますよね。
屋外では『多少危険があっても進まなければならない』状況がありますので、そういった経験や対処法を教えることも一つの目的となります。
だから病院でも『立ち止まらないで進む練習』や、『人を追い越す練習or追い越される練習』なんかも必要です。
患者さんが他人に気づくまで放っておくことも大切です。
そのへんの判断はセラピストがしっかり判断する必要があります。
だってそういったことが出来ないから入院しているんだから。
まとめ:リハビリで屋外歩行練習をする必要性と目的
【屋外歩行の必要性】
外出機会を得ることで人間らしい健康な生活を営むこと。
【屋外歩行の目的】
- 床面の凹凸への対応
- 周囲の景色や環境の変化への対応
- 周囲状況に合わせ自分の動きを変化させる
屋外歩行はリハビリの『まとめ』として取り入れることが多いです。
しかし、私の考えでは『なるべく早い段階から屋外外歩行を取り入れる』ほうが良いと思います。
早い段階で屋外を経験させることで、屋内での『行動』も変わるはずです。
そうすれば今後、自宅に戻ることを想定した際、スムーズに環境適応できるものと考えます。
また、その屋外歩行の練習風景を見て、セラピストは新たな問題点を発見し、リハビリプログラムに組み込めるでしょう。
そして、患者さんは周囲を見回せて、環境に適応できる能力が身に就けば、退院は問題なく可能となるます。