整形外科クリニックは理学療法士に人気の職場
理学療法士に人気がある就職先のひとつが「整形外科クリニック」です。
理由はシンプルで、運動器疾患を中心に見られるため、脳血管リハに苦手意識がある人や、スポーツ系の患者を見たい人が選びやすいからです。
ただし、「整形外科に就職すればスポーツリハビリができる!」と短絡的に考えると後悔することも。
実際の整形外科クリニックは、地域の高齢者が中心で、慢性的な痛み(変形性関節症や腰痛)への対応がほとんどです。
本記事では、整形外科クリニックで働く理学療法士が知っておくべき
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仕事内容
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主な患者層
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求められるスキル
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仕事のきつさとやりがい
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給料・勤務時間
を詳しく解説します。
これから整形外科への就職・転職を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
整形外科クリニックの特徴と患者層
整形外科クリニックと聞くと「スポーツ選手が来る場所」をイメージする人もいますが、実際には地域の町医者的な存在です。
整形外科クリニックの患者層
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年齢層:30~70代が中心(特に高齢者が多い)
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主な疾患:
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変形性膝関節症(膝OA)
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腰痛症
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肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
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骨折や頚椎損傷(外傷系は一部)
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交通事故後の後遺症
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若年層の患者は少なく、もし来てもリハビリを継続するケースは多くありません。
そのため、「スポーツリハをやりたい」と思って入職した人はギャップを感じやすい点に注意が必要です。
整形外科で働く理学療法士の仕事内容
1. 物理療法の知識は必須
整形外科クリニックでは診察後、リハビリ室で**物理療法(物理的な刺激を用いた治療)**を受ける患者が多いです。
そのため、物理療法機器の特徴・適応・禁忌をしっかり理解しておく必要があります。
代表的な機器:
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ホットパック
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マイクロウェーブ
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腰椎・頚椎牽引
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バイブラバス
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低周波治療器
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SSP療法
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超音波治療器
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レーザー治療器
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メドマー(空圧マッサージ)
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ウォーターベッド
整形外科に就職するなら、まずこれらの基礎知識を押さえておきましょう。
2. 変形性関節症(OA)患者への対応が6割以上
整形外科に来る患者の約6割は**変形性関節症(特に膝OA)**です。
そのため、OAの病態理解・評価・運動療法は必須スキル。
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筋力低下(特に大腿四頭筋)
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可動域制限
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歩行障害
などに対して、短時間で効果を実感できるアプローチが求められます。
3. 短時間リハで効果を出すスキル
整形外科クリニックは回復期病院のように40分の個別リハを取れる環境ではありません。
多くの場合、1人あたり20分程度。
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90×200cmの治療ベッドが並ぶ狭い空間
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患者が途切れなく来院
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短時間での即効性が求められる
このため、
「20分でいかに効果を出せるか?」という技術が重要です。
マッサージやストレッチだけではなく、セルフエクササイズ指導や生活動作の工夫提案がポイントになります。
整形外科で働く理学療法士のやりがいときつさ
やりがい
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短期間で多くの症例を経験できる(年間4,000人以上対応することも)
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運動器疾患の基礎を徹底的に学べる
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即効性のあるリハビリスキルが身につく
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地域に根差した患者との関わりが長期的に続く
きつい点
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同じ患者のルーチン対応になりやすくモチベーションを保ちにくい
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劇的な改善が見られにくい慢性疾患が中心
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1日20人以上を相手にする体力的な負担
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勤務時間は8時間+長い休憩で拘束時間が長い
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休日は少なく、土曜勤務も多い
このように、「体力勝負+モチベーション維持」が整形外科で働く上での大きな課題です。
整形外科クリニックの勤務時間・休日・患者数
勤務時間の例
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8:30 出勤
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12:00~14:00 休憩(2時間)
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14:00~18:30 午後勤務
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19:00前後に退勤
拘束時間は長めですが、昼休みにしっかり休息や勉強ができる点はメリット。
休日
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日曜+平日1日休み(木曜や水曜が多い)
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祝日は診療している場合もある
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連休はGW・夏季・年末年始程度
平日休みは役所や銀行に行きやすい反面、友人や家族との予定が合わないデメリットもあります。
患者数
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1日200~400人が来院することも
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理学療法士は20人前後を担当
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多い日は22単位以上になることも
「数をこなす環境」である分、経験値は爆速で積めると言えます。
整形外科クリニックの給料・年収
月給
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基本給:17万~25万円
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各種手当:10万~12万円
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総支給:27万~35万円程度
試用期間(3か月)は20万円前後に抑えられることもあります。
年収
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一般職:360万~450万円
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主任クラス:500万円前後も可能
ボーナス
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年1~4か月分(病院によって差が大きい)
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福利厚生が弱い職場では10万円程度のことも
毎月の給与は比較的高めだが、ボーナスが少ない傾向があります。
整形外科に向いている理学療法士の特徴
整形外科クリニックは以下のような人に向いています。
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運動器疾患を基礎から学びたい新人PT
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多くの患者を経験してスキルアップしたい人
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即効性のあるリハビリスキルを磨きたい人
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地域に根差した医療に携わりたい人
逆に、以下のタイプにはやや不向きかもしれません。
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長期的な回復を支援したい(回復期志向)
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スポーツリハを専門的にやりたい
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ゆったり1人に時間をかけて介入したい
就職・転職で失敗しないためのポイント
整形外科への就職を考えるなら、事前に以下を確認しましょう。
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患者層(スポーツ希望なら本当に若年層が来るか確認)
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勤務時間・拘束時間(昼休みの長さ・残業の有無)
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休日(土曜勤務の有無、週休2日制か)
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給料・ボーナス・福利厚生
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教育体制(勉強会や研修の有無)
求人票だけでは分からない情報は、見学や口コミサイト、転職エージェントを活用して入職前に必ずチェックしましょう。
まとめ:整形外科は「基礎を学べる最高の環境」
整形外科クリニックは、理学療法士にとって運動器リハの基礎を徹底的に学べる環境です。
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多数の症例経験
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即効性スキルの習得
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地域医療への貢献
といったメリットがある一方、
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患者のルーチン化
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体力的な負担
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拘束時間の長さ
といったデメリットも存在します。
就職を検討している方は、仕事内容・働き方・給料・患者層をしっかり理解したうえで選択することが大切です。
整形外科は、キャリアの初期にスキルアップを目指す理学療法士にとって非常におすすめの職場です。