理学療法士(PT)の転職市場はここ数年で大きく変化しています。
病院やクリニックに加えて、デイサービスやデイケアでの求人が増えており、求人サイトやハローワークでもよく見かけるようになりました。
一方で、
「デイサービスで理学療法士は何をするの?」
「給料は病院より高いの?安いの?」
「未経験でも働けるの?」
と疑問を持つ人も多いでしょう。
この記事では、デイサービス・デイケアで働く理学療法士の仕事内容・給料・働き方・将来性を徹底的に解説します。
これから転職を検討している方や、生活期リハに興味がある方はぜひ参考にしてください。
デイサービス・デイケアとは?理学療法士の役割
デイサービスとデイケアの違い
まず、似ているようで異なる「デイサービス」と「デイケア」について整理しておきましょう。
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デイサービス(通所介護)
介護保険サービスのひとつで、利用者が施設に通い、食事・入浴・機能訓練・レクリエーションなどを受けます。
医師は常駐していない場合が多く、介護士や看護師が中心となります。 -
デイケア(通所リハビリテーション)
医療機関や介護老人保健施設に併設されており、医師の指示のもとでリハビリを提供する場所。医療色が強く、理学療法士・作業療法士が配置されています。
どちらにも共通しているのは、利用者の生活機能の維持・改善を目的にしていること。
その中で理学療法士は「機能訓練指導員」として配置され、運動療法や体力づくりを通じて生活を支える役割を担います。
利用者層と利用目的
デイサービスやデイケアを利用するのは、65歳~90歳代の高齢者が中心。特に80代が多く、自立歩行ができる方から、車椅子で介助が必要な方まで幅広いです。
利用の目的としては、
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家族の介護負担を減らしたい
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外出や他者交流を通じて認知症を予防したい
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体力を維持し、自宅での生活を長く続けたい
といった理由が多いです。
病院リハと違い、デイでは「治療」というよりも「生活のサポート」「予防的なリハ」が中心になります。
理学療法士の仕事内容【デイサービス編】
デイサービスでの仕事は「リハビリ」だけではありません。実際には以下のような幅広い業務があります。
1. リハビリ・機能訓練
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マシントレーニング(チェストプレス・ラットプルダウン・レッグプレスなど)
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集団体操・ストレッチ
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個別リハ(1回20分程度)
利用者は比較的元気でリハ意欲が高い方が多いため、筋トレ・有酸素運動・柔軟性向上プログラムなどが中心になります。
病院勤務よりも「アスレティックトレーナー」に近い感覚での指導が必要です。
2. 介助や生活支援
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バイタル測定(血圧・脈拍など)
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食事・入浴・トイレの誘導
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利用者送迎の補助
理学療法士だからといってリハだけするのではなく、介護士と同じように生活支援を担うことも多いのが特徴です。
3. 書類・会議業務
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計画書や報告書の作成
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ミーティングでの情報共有
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ケアマネや家族への報告・相談
医師が常駐していない場合、理学療法士が利用者の身体変化をいち早く把握し、関係職種に伝える役割を果たすこともあります。
1日の流れ(デイサービス勤務例)
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8:30 出勤・送迎対応
利用者が施設に到着。玄関で迎え入れ、車椅子移動をサポート。 -
9:00 バイタルチェック・準備運動
血圧や体温を測定し、体操を実施。 -
10:00 個別リハビリ・マシントレーニング
利用者ごとに運動プログラムを提供。 -
12:00 昼食・休憩
食事の介助や口腔体操を行い、スタッフも交代で休憩。 -
13:30 集団リハビリ・レクリエーション
複数人を同時に運動指導。認知機能訓練を兼ねることも。 -
15:00 入浴・トイレ誘導補助
安全に移動できるようサポート。 -
16:00 書類作成・送迎
計画書・報告書を作成し、利用者を自宅へ送り届ける。 -
17:30 退勤
基本的には定時退社だが、書類業務で残業になる日もある。
デイサービス勤務に必要なスキル
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基礎的な理学療法スキル(運動学・解剖学・生理学)
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運動処方の知識(マシントレーニング、筋トレ、安全管理)
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コミュニケーション能力(利用者・家族・ケアマネ・介護士との連携)
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観察力(オーバーワークの見極め、体調変化への対応)
特に「利用者本人はやる気があるけど、身体には負担が大きい」といった場面で、冷静に判断して説明できる力が求められます。
勤務時間と休日
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勤務時間:8時間勤務(送迎の時間で前後あり)
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休日:土日休みの職場が多い
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休暇:GW・夏季・年末年始などしっかり休める傾向
病院勤務に比べると、残業が少なく年間休日が多いため、ワークライフバランスを重視する人には向いています。
給料・年収相場
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月給:22万円~28万円
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手当:資格手当・送迎手当・処遇改善加算など
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年収:350万円~450万円(新人)
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高待遇例:経験3年で年収500万以上の提示例もあり
ただし施設によって差が大きく、ボーナスなし・基本給高めという形態もあります。
給与水準は「病院よりやや高い」ことが多く、働きやすさと収入のバランスが取れた職場が多い印象です。
メリット・デメリット
メリット
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土日休み・定時退社が多く働きやすい
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利用者が元気でリハビリ意欲が高い
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予防リハビリの経験が積める
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地域包括ケアの一員として役割がある
デメリット
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書類作業が多い
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医師不在のため緊急時対応の責任が重い
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送迎・介助などリハ以外の業務も多い
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病院に比べて疾患治療の経験は少ない
将来性:デイサービスで理学療法士の需要は拡大中
今後、医療現場では「治療リハ」から「予防リハ」へとシフトしていくと予想されています。
退院後の再入院を防ぐために、デイサービスでの運動指導や機能訓練の需要はますます増えるでしょう。
特に高齢化社会においては、
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要介護化の予防
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フレイル対策
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認知症予防
といった分野で理学療法士の活躍が期待されています。
まとめ:デイサービス勤務は理学療法士の新しいキャリアパス
デイサービスやデイケアで働く理学療法士の仕事は、病院勤務とは大きく異なります。
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リハビリ以外の業務も多く、幅広いスキルが求められる
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給料は比較的良好で、休日も多い
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予防リハビリを中心に、今後需要が拡大する分野
👉 **「臨床経験を積んだ後のキャリア」や「ワークライフバランスを重視した転職先」**として、デイサービスは有力な選択肢といえるでしょう。
これから転職を検討している理学療法士は、ぜひ求人票だけでなく「実際の仕事内容」「勤務条件」「将来性」を見極め、自分に合った職場を選んでください。