糖尿病患者さんを担当すると、
- 「歩けばいいの?」
- 「筋トレって必要?」
- 「どんな運動指導が正解なの?」
と悩む新人理学療法士は多いと思います。
実際、糖尿病患者さんへの運動療法は重要と言われていますが、「具体的に何を組み合わせればよいのか」は意外と迷いやすいポイントです。
そんな中、2025年に発表された論文で、「多面的(多要素)な運動」が2型糖尿病患者に有効である可能性が示されました。
- Meta-Analysis PeerJ. 2025 Nov 20:13:e20146. doi: 10.7717/peerj.20146. eCollection 2025.
- Effectiveness of multi-component exercise in individuals with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis
- Zhiyuan Sun # 1 2, Haiqing Zeng # 1, Hualei Liu 1, Mengqi Hu 1, Xuewen Tian 1, Dewei Mao 2 3, Rui Zhang 1
- Affiliations Expand
- PMID: 41287857 PMCID: PMC12640639 DOI: 10.7717/peerj.20146
今回ご紹介する論文は2025年に掲載された論文です.
この記事では、新人PTにもわかるように、
- 研究の内容
- 何がわかったのか
- 臨床でどう活かすのか
をシンプルに解説します。
そもそも「多面的な運動」って何?
まず、多面的(多要素)運動とは、複数の運動を組み合わせる方法です。
たとえば、
- 有酸素運動(歩行・自転車など)
- 筋力トレーニング
- バランス練習
- 柔軟性運動(ストレッチ)
などを組み合わせる運動プログラムを指します。
つまり、「毎日歩きましょう」だけではなく、複数の要素を入れるという考え方です。
糖尿病患者さんは、
- 筋力低下
- サルコペニア
- 肥満
- 心肺機能低下
- 転倒リスク増加
など複数の問題を抱えていることが少なくありません。
そのため、「1つの運動だけ」では不十分な可能性があります。
今回紹介する論文
2025年に発表されたメタアナリシス(複数研究をまとめた研究)です。
37本の研究、3,201名の2型糖尿病患者を対象に、「多面的な運動は本当に効果があるのか?」を検証しています。
メタアナリシスは研究の中でもエビデンスレベルが高く、臨床判断の参考になりやすい研究デザインです。
結論:多面的運動はかなり有効だった
結論から言うと、「かなり効果があった」という結果でした。
特に改善が見られたのは以下です。
① 血糖コントロールが改善
まず大きいのが、HbA1c(ヘモグロビンA1c)と血糖値が改善したことです。
HbA1cは、過去1〜2か月ほどの血糖状態を示す指標で、糖尿病管理では特に重要です。
つまり、運動によって血糖管理が良くなる可能性が示されたということです。
これは理学療法士にとってかなり重要なポイントです。
なぜなら、「運動が身体機能だけでなく、糖尿病そのものに影響する」ことを意味するからです。
② 筋力や体力も改善した
多面的運動では、
- 上肢筋力
- 下肢筋力
- 持久力(最大酸素摂取量)
も改善していました。
新人PTが臨床でイメージしやすく言うと、「疲れにくくなり、動ける身体に近づく」ということです。
糖尿病患者さんでは、
- 「少し歩くと疲れる」
- 「活動量が少ない」
というケースが少なくありません。
すると運動量が減り、さらに血糖コントロールが悪化する悪循環に入ります。
運動療法には、この悪循環を断ち切る役割があります。
③ BMIや脂質も改善
さらに、
- LDL(悪玉コレステロール)低下
- 中性脂肪低下
- BMI改善
も認められました。
つまり、糖尿病だけではなく、生活習慣病全体に良い影響がある可能性があります。
糖尿病患者さんでは、高血圧、脂質異常症、肥満を合併していることも多いため、これは臨床的に大きなメリットです。
④ 認知機能や生活の質(QOL)まで改善
今回の論文で面白いポイントは、認知機能まで改善していたことです。
糖尿病は認知機能低下リスクとも関連すると言われています。
そのため運動によって、
- 集中力
- 判断力
- 全体的な認知機能
が良くなる可能性があります。
また、
- 「身体が動きやすくなった」
- 「疲れにくくなった」
ことで生活の質(QOL)も改善していました。
なぜ運動が血糖改善する?
糖尿病患者さんでは、インスリンがうまく働かず、血糖値が高くなりやすい状態になっています。
しかし筋肉を動かすと、インスリンがなくても筋肉が糖を取り込みやすくなると言われています。
さらに、筋力トレーニングで筋肉量が増えると、糖を使う量も増えるため、血糖コントロール改善につながります。
つまり運動療法は、「体力づくり」だけではなく、糖尿病そのものを改善する意味があるということです。
新人PTが臨床でどう活かす?
今回の研究から考えると、「歩行練習だけ」では少し足りない可能性があります。
たとえば糖尿病患者さんなら、
- 有酸素運動
- 歩行練習
- エルゴメーター
- 筋力トレーニング
- スクワット
- 立ち座り
- セラバンド
- バランス練習
- 片脚立位
- 重心移動練習
- 柔軟性
- 下肢ストレッチ
などを組み合わせる視点が重要になります。
特に今回の研究では、「週3回以上・6か月以上」継続した運動で効果が高い可能性が示されました。
つまり、短期間で終わる運動ではなく、“続けられる運動指導”が重要ということです。
もちろん、全員に同じ運動をすればよいわけではありません。
糖尿病患者さんでは、
- 糖尿病性神経障害
- 足病変(フットケア)
- 心疾患リスク
- 低血糖リスク
に注意が必要です。
新人のうちは、「血糖値」「既往歴」「運動制限」を先輩や医師と確認しながら進めることが大切です。
まとめ
2025年のメタアナリシスでは、2型糖尿病患者に対する多面的な運動が有効である可能性が示されました。
特に、
- HbA1c改善
- 血糖コントロール改善
- 筋力向上
- 持久力改善
- BMI改善
- 認知機能改善
など、幅広い効果が認められています。
新人PTがまず覚えておきたいのは、「糖尿病患者さん=歩行練習だけ」ではないという視点です。
有酸素運動、筋トレ、バランス練習などを組み合わせながら、「この患者さんには何が必要か?」を考えることが重要になります。
また、血糖値や合併症リスクを確認しながら、安全に継続できる運動プログラムを考えることも理学療法士の大切な役割です。





